月給・日給・時給など給与計算の基礎となる単価はいろいろあります。
時給なら単価×働いた時間、日給なら出勤日数を乗じて毎月の給与を算出すると思います。
もちろん残業や休日出勤があれば割増賃金を計算する必要がありますし、通勤手当や住宅手当など、会社独自の手当を設定している会社もあるでしょう。
ところで、従業員に給与を支払う時に、総額をそのまま渡したりしてないですよね?
会社は従業員の給与から所得税や住民税、雇用保険料、社会保険料(の従業員負担分)を差し引いた金額を従業員に支払い、それぞれ天引きしたものを管轄の役所に納めます。
給与計算の流れ
まずは各金額の根拠となる勤怠項目(出勤日数や労働時間など)を整理します。
次に勤怠項目で整理した日数(時間)に単価を掛けて支給額を計算します。
そして、社会保険料等の控除額を計算します。
支給額から控除額を差し引いた残りを給料日に支給します。
勤怠項目
金額の計算の前に、期間の出勤日数、労働時間、残業時間、遅刻・早退、有給休暇などを整理します。
なお、勤務時間を集計する際は、原則として1分単位で計算しなければなりません。(5時間3分の3分を切り捨てすることは労働基準法24条(賃金全額払いの原則)に反します。)
ただし、1か月単位での集計結果の30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げすることが可とする例外規定もあります。
支給項目
項目についてはある程度会社ごとに自由に決定できますが、通勤交通費のように非課税となるものについては注意が必要です。
①基本給
基本となる労働の対価。月給や日給、時給から計算します。
②残業手当
法定労働時間以上の労働に対する加算給。ただし、法定労働時間を超える労働時間を働いてもらうためには労働基準法36条による協定(通称36協定)を結ぶ必要があります。
③休日出勤手当
あまり馴染みがないかもしれませんが、法定休日に出勤した場合に加算される手当です。
④通勤手当
通勤に必要な公共交通機関の定期券やガソリン代等の手当。通勤手当は会社と自宅等との距離によって非課税となる範囲があります。
⑤その他の手当
上記以外にも業績手当・資格手当・皆勤手当・役職手当など会社ごとにある程度自由に設定できます。
控除項目
給与から控除されるのは以下の通りです。
①健康保険料
②介護保険料
③厚生年金保険料
①~③の金額は“健康保険・厚生年金保険の保険料額表”を用いて算出します。
と言っても、基本的には算定基礎届で決定された標準報酬月額が適用されるので、多少給料総額に変動があっても、保険料率自体に変更のない限り毎月同額です。
④雇用保険料
労働保険のうち雇用保険部分については労働者(従業員)の負担部分があります。
社会保険が労使折半なのに対して、雇用保険は割合が異なりますのでご注意ください。
⑤源泉所得税
支給総額から社会保険料を引いた金額をもとに税額表から算出します。
扶養家族の人数によって毎月の天引き額は異なります。
最終的には年末調整(年内最後の給与又は賞与)で調整されますが、扶養親族の異動(増減)については気を付けたいところです。
⑥特別徴収住民税
住民税は前年の所得に応じて毎年5月ごろに決定されます。
給与の場合は原則として、支払者が給与から天引きして支払うこととなっています。
⑦その他の控除(本人負担の社宅家賃や従業員負担の物品の購入費用など)
社宅や従業員負担の物品の購入費用など、給与から直接控除して支給することがあると思います。
これらの控除は上記①~⑥と異なり、労使協定を結んだ場合に可能となりますので事前に就業規則や賃金規定、労使協定などの書類を整備しましょう。
支給合計が決まりましたら、社会保険料や所得税、住民税など天引きする金額を確認します。
差引支給額
支給額から控除すべき金額を差し引いたのが従業員に支払う金額です。
手取額と言われることもありますが、これが経営者側と労働者側の認識の差につながっていきます。
経営者側は額面給与(+会社負担の社会保険料額)を見て、「人件費って結構かかるなぁ」と感じますし、従業員側は手取り額を見て「給料低いなぁ」と感じることが多いのではないでしょうか?
専門家との顧問契約
給与の計算を専門家(社労士・行政書士等)に依頼することももちろんできますが、費用が掛かりますので、毎月の給料がおおむね一定などの場合はご自身での計算をお勧めします。
(社会保険・労働保険の手続きについては社会保険労務士のみが代行可能ですので違法業者にご注意ください。)
しかし、事業が大きくなると従業員数も増えてきますし、労働日数や時間も異なることから金額に変動が生じるようになります。
この規模まで成長されたのなら迷わず専門家と顧問契約を行いましょう。
知らずに法律に抵触するなどのトラブルの抑止にもつながります。
余談にはなりますが、法律には強行規定と任意規定があります。
使用者(経営者)と労働者(従業員)だと労働者の立場が低くなりがちのため、労働者の不利益防止のためにお互いの合意があっても認められないことが色々とあります。
このように、労使の合意に関係なく、法律で定められた内容が適用されるものを強行規定と言います。
従業員が増えてくると労働問題が生じることもあるため、不安に感じたらあらかじめ社会保険労務士にご相談されるといいでしょう。
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