源泉徴収制度は、給料の支払者がその金額から所得税を差し引いた額を相手方に支払い、徴収した所得税を税務署に納める制度です。
給料が100,000円、源泉所得税が1,000円の場合は、99,000円を支払い、後日税務署に1,000円を納付します。
給料のほかにも源泉徴収の対象は原稿料や講演料、弁護士や税理士、司法書士等の報酬、ホステス・コンパニオンへの料金など様々です。
今回は従業員の給与をテーマに取り上げます。
源泉所得税の納付時期
原則として会社は、従業員の給与から源泉所得税を天引きし、翌月の10日までに納付しなければなりません。
しかし、従業員が10名未満の事業所は“源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書”をあらかじめ提出することで納付月を7月(1月~6月分)と1月(7月~12月分)の年2回とすることも可能です。
納期の特例を利用する場合、従業員からは毎月天引きしますので、納付月になってお金がないなどとならないよう気を付けてくださいね。
徴収税額と年末調整
源泉所得税の額についてですが、最終的には年末調整で年税額を確定します。
よく年末に税金が戻ってくるって言いますよね?
これは、毎月の徴収した額と年税額を計算した結果、多かった分を返しているんですが、中には徴収額が年税額に満たないため年末徴収される人もいます。
とはいえ、あまりにもずれた金額というのも困りますので、給与所得の源泉徴収税額表というもので毎月の徴収額が記載されています。
甲欄と乙欄
まず、甲欄と乙欄についてです。
通常、給料が1社からのみの場合は年末に“保険料控除申告書”や“扶養親族申告書”等の書類を提出すれば、会社が年末調整を行ってくれます。
つまり、特別な事情の無い限り自分で確定申告をする必要はありません。
この場合に仮に勤務先をA社とすると、A社は甲欄の扶養親族の人数に応じた徴収額を月々天引きして、年末調整で清算します。
ところが、B社からも給料を得ている場合など、収入減が複数の場合、B社には扶養親族申告書を提出せずに「すでに別の会社に提出している」と伝えます。
この場合、B社は乙欄を用いて源泉所得税を天引きします。
表を見ていただければ一目瞭然ですが、乙欄の徴収額は甲欄の徴収額の数倍となります。
私の想像ですが、ダブルワークの場合は年間の収入合計の予想がつかないことであらかじめ高めの金額を徴収していると考えられます。(所得税は年収が多くなるほど税率が上がる累進課税をとっています。)
扶養親族等の数
次に甲欄を適用する場合で、扶養親族の数で徴収額が異なります。
この扶養親族等の数ですが、基本的には控除対象配偶者と控除対象扶養親族の合計人数の欄を使用します。
控除対象扶養親族ですが、16歳未満の扶養親族はこれにあたりませんのでご注意ください。
また、障害を持っている場合や、寡婦、老人扶養親族、勤労学生などの場合は数を足します。
徴収税額の計算例
具体的な数字で当てはめてみましょう。
夫 月給30万円 社会保険料43,000円
妻 月給8万円(年収96万円)
長女 19歳 大学生 バイト収入年間130万円
長男 17歳 高校生 バイト収入年間40万円
二女 13歳 中学生
まず、基準となる給与の金額ですが、総額から社会保険料を引いた金額となりますので
300,000-43,000=257,000
となり、257,000以上260,000未満の区分となります。
次に、扶養親族の数ですが、妻と長男が給与収入103万円未満であり、控除対象となります。
長女は年収が基準額を超えているため控除対象扶養親族には該当しません。
二女は年齢が16歳未満のため控除対象扶養親族に該当しません。
よって、扶養親族等の数は2人となります。
令和4年度の源泉徴収税額表で確認すると、3,620円が源泉徴収税額となります。
まとめ
会社にとっても従業員にとっても給与計算は極めて重要なものです。
正しい金額での支払いが当然であり、多くても少なくてもいけません。
源泉所得税は年末に清算されるとは言え、途中での扶養親族の異動などできる限り正確な処理を心がけましょう。
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