建設業許可を取得すれば請負金額の制限がなくなり、大きな工事を受注することができるようになります。
建設工事は簡易な修繕工事から住宅の新築工事、ビルの建設、さらには橋や高速道路の建設など様々なものがありますが、建設業の許可を受けていないために金額制限で受注できないのは大きな機会ロスです。建設業を営んでいる方はぜひ建設業許可を取得されることをお勧めします。
建設業の許可は難しいと思われている方も多いです。
しかし、役所へ申請し、許可を受けるもののほとんどは許可の基準が明確となっており、その基準をクリアすれば原則として許可を受けることができます。
今回は、一般建設業の許可について、その申請方法をご紹介いたします。
なお、許可申請には地域によるローカルルールや独自の判断基準がある場合もあって、その点ご注意いただきたいと思います。
以下、特に記載がない場合は大阪府における建設業許可の申請方法・添付・提示書類の説明となります。
必要書類
建設業許可は申請書類(提出書類)と提示書類が必要です。
提出書類とは手引きに記載されている〇〇号様式とかですが、インターネット等でダウンロードすることができます。提示書類とは許可基準を満たしていることを証明する書類です。代表的なものが社会保険に加入していることを証明する標準報酬決定通知書や健康保険証、雇用保険に加入していることを証明する概算・確定保険料の申告書や保険料の領収書です。ほかにも経営経験を証明するために確定申告書の控えや法人決算書、その間の請求書などがあります。
クリアすべき5つの要件
- 適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること。(建設業法施行規則第7条第1号、第2号)
- 営業所ごとに専任技術者を配置していること。
- 財産的基礎・金銭的信用を有すること。
- 欠格要件に該当せず、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
- 営業所について
適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していることとは
- 適正な経営体制について
申請者が建設業の経営を行う知識や経験を十分に有している人であることが必要です。従前は経営業務の管理責任者の配置ともいわれていましたが、個人であれば原則として本人、法人であれば常勤役員等(業務執行社員、取締役、執行役)のうちの1人がこれに該当する必要があります。
この要件に該当する方法はいくつかありますが、一番多いパターンをご紹介します。
・5年以上の建設業の経営経験
証明方法(大阪府の場合)
1)確定申告書等で5年以上経営をしていることを証明する。(経営経験の証明)
+
2)期間分の契約書、請書、請求書など(各工事の期間が12か月空かないように)を提示する。(建設業を行っていた証明)
- 適切な社会保険への加入
令和2年10月より、適切な社会保険への加入が要件化されました。
建設国保や健康保険、厚生年金へ加入していることが必要です。個人事業主でも常時雇用する労働者が5人以上の場合は社会保険への加入が義務となりますのでご注意ください。(建設国保など健康保険については職域を適用することができる場合もあります。)
証明方法
標準報酬決定通知書、健康保険証の提示
専任技術者となれる人
専任技術者は常勤の役員または常勤の労働者で、資格または一定の経験がある人がなれます。
具体的には各施工管理技士、建築士、技能士、電気工事士などの有資格者、10年以上の実務経験者、特定の学科を終了後の実務経験者(期間は内容によって異なります。)
証明方法
・有資格者… 資格者証の添付
・実務経験による場合… 実務経験証明書の添付 + 期間分の請求書を提示(各工事の期間が12か月以上空かないように)
※(他の県では年に4枚程度の請求書とさらに入金のわかる通帳のコピーを要求されることもあります)
なお、専任技術者は原則として営業所に常勤している必要があり、現場に出ることを制限されています。(例外として、一定の条件下においては現場に行くことも認められていますが、遠方や常駐しなければならない現場は認められませんのでご注意ください。
財産的基礎・金銭的信用とは
許可の必要な工事はそれなりの規模となります。
そのため、一定の資金力を要件とされているのですが、以下のどちらかに該当すれば大丈夫です。
- 直前決算において純資産(決算書の貸借対照表参照)の額が500万円以上
- 申請日からさかのぼって28日以内の金融機関残高証明書で500万円以上の資金力を証明できる
欠格要件に該当しないとは
建設業法では、破産者や法令に違反して処罰された者、暴力団関係者などには許可をしないこととしています。ただし、たとえ過去にこれらに該当していたとしても、そうでなくなってから一定の期間を経過すれば許可を受けることができます。
※その他欠格要件については建設業法第8条をご覧ください。
営業所の要件とは
建設業の営業所とは請負契約の締結、見積もり、入札など契約に関する実態的な行為を行う事務所です。
営業所には次の要件に該当することが求められます。
- 事務所など建設業の営業を行うべき場所を常時使用する権原を有していること(自分の持ち物件か賃貸なら営業することについて大家さんの承諾を取っておいてねということです)
- 建物の外観又は入口等において、申請者の商号又は名称が確認できること(お客さんが外から見てわかる位置に会社名など看板をつけておいてね)
- 固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること(そのままですが、備品をちゃんと揃えておきなさいよ~ってことです)
- 許可を受けた建設業者にあっては、営業所ごとに建設業許可票を掲げていること(“既に許可を持っている”場合は金看板を見える位置に置いておくように)
- 支店等の代表者が常勤しており、かつ契約締結等に関する権原を申請者から委任されていること(代表者がちゃんといましょうね)
- 専任技術者が営業所に常勤して専らその職務に従事していること(工事について詳しい人がいないと契約できませんからね)
大阪府では“営業所概要書”という書類に営業所の権利関係や写真を張り付けて提出し、上記要件を証明します。
まとめ
いかがでしたか?
説明は長くなってしまいましたが、要約すると
- 適正な経営体制を有しており、適切な社会保険に加入していること。
- 営業所ごとに専任技術者を配置していること。
- 財産的基礎・金銭的信用を有すること。
- 欠格要件に該当せず、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
- 営業所について
の5つの要件を満たせば一般建設業許可は受けることができます。
少なくとも5年間の経営経験が必要なので、この部分だけは時間がかかりますが、あとは資格を取得するか同じく時間はかかりますが実務経験を積めばいいでしょう。(実務経験は雇われていた時の経験でも可能です。)
500万円の資金についてはコツコツ貯めるか融資を受けましょう。
建設業許可を受けると受注できる請負額の制限はなくなりますのでビジネスチャンスを逃すことも少なくなるでしょう。ただし、特定建設業許可が必要な工事や、監理技術者の配置が必要な工事にはご注意ください。
一般建設業許可で請負額の上限はございませんが、元請工事で下請人に一定以上の請負額で外注する場合は特定建設業の許可が必要になります。
最後に
建設業許可を取得するデメリットについても書いておきます。
- 毎年決算変更届(事業報告)を行わなければならない。(決算書が公開される)
- 登録している内容に変更があれば都度変更届をしなければならない。
- 専任技術者や経営を管理する常勤役員が遠方の工事現場に行けない。
手間や費用が掛かること、行動範囲の制約が許可を受けることによって発生します。
しかし、これらのデメリットを考慮しても許可を受けるメリットが大きいと思いますので是非チャレンジしてみてください。
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